しとしと、と流れる水を拭えずに。
唯、君の声が聞きたくて。
訳も無く
唯、ただ腕を伸ばす。
という言い訳をしながら、貴方との距離をとろうとする。
貴方と居ると得られるものも多いけど、失うものも多いのだもの。
鉛をぶち当てられたような衝撃。
だけど、それが真実というのならば。
嗚呼、酒の神よ。
その魔力じみたその聖なる液で、ただひたすら優しい夢を見させておくれ。
ただこの愚かともいえる私をただ、陶酔させよ。
その一言が、声が、視線が、笑い声が、あたしを突き落とす。
視線が。
声が。
笑いが。
頭の先からつま先まで痺れるような痛み。
吐き気がする。気持ち悪い。
あたしの何が非が有るというのでしょうか?
私が何をしたのか。と問いたい。
貴方はただ何も言わないで、あたしの手を握りながら前を歩く。
「ねぇ?」
何も言わない後ろ姿に声を落とす。
嗚呼、貴方あたしの声なんか聞いてないんだね。
雪のように白い彼は、ただ上を見上げ降る雪を眺めていた。
隣に居たボクは、ただ彼が消えないように祈った。
貴方の居なくなった白い無機質な部屋に戻る度に、酷く虚無感に襲われる。
一人で居る帰り道は酷く右手が冷たく感じる。
先ほどまでの貴方の体温の余韻すら感じられない。
貴方の左手も同じ様になって、同じ様に感じててくれたらいい。
あたしを覗き込む貴方の顔が歪んで、あたしは意識を手放した。
ふと気がついたの。
あたし、貴方とあまり目を合わせないなぁって。
いつもどこか反らしてしまう。
見詰め合うと力が抜ける。視界が歪む。
だから、怖い。
其の手を離してくれとも言えず、ずっと居て欲しいとも言えないあたしは誰が好きなのでしょうか?
貴方の声を聞かなきゃ良かった。
貴方の腕の温もり知らなきゃ良かった。
貴方の唇の感触も、言葉も、想いも、抱きしめる力も全部。
全部忘れられたらどんなに楽でせうか?
貴方の其の手を振り払って「あの人のとこに帰る」と私が言ったら貴方は何て言うでしょうか?
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